下部消化管疾患

大腸癌

大腸疾患について

下部消化管に対する手術では、大腸がんなどの悪性疾患を中心に、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)や大腸憩室症などの良性疾患、痔などの肛門疾患、虫垂炎や腸閉塞、大腸穿孔などの緊急を要する疾患など、大腸・肛門疾患全般を対象に行っています。特に大腸がんに対する手術では、高度の技術を要する腹腔鏡手術を中心に行い質の高い医療を提供しています。
また2018年4月から直腸がんに対するロボット支援下手術が保険収載となり、当院でも保険診療が可能です。

腹腔鏡手術について

腹腔鏡手術とは「腹腔鏡」というテレビカメラでお腹の中を見ながら行う手術のことです。従来の「お腹を切る手術」は開腹術と呼びますが、腹腔鏡手術は開腹術と比べて非常に小さな創で手術が受けられるため、傷が目立たない、痛みが少ない、術後の回復が早い、早期の退院と社会復帰が可能、などの多くの利点があります。
また、腹腔鏡による拡大視効果によって肉眼では見えにくい組織も観察しやすくなりますので、より精度の高い手術が行うことが可能になります。当院では、この腹腔鏡手術を早くから積極的に導入しており、これまで胆嚢、胃、大腸の手術で多くの症例を積み重ねてきました。最近では大腸がん手術のうちで腹腔鏡下手術の占める割合は約90%となっており、全国平均よりも高い割合です。

一方、腹腔鏡手術は高度な技術とトレーニングを必要とする特殊な手技であるためしばしば手術の安全性が問題となりますが、当院では日本内視鏡外科学会による技術認定取得者(日本内視鏡外科学会技術認定医)を中心に、十分な技術と経験を有する専門医が安全で確実な手術を行っています。

大腸癌について

大腸がんは大腸(結腸・直腸)の粘膜から発生するがんで、近年日本で増加している悪性腫瘍の一つです。大腸がんに対する治療は手術が中心となり、早期がんはもちろん、進行がんであっても、切除可能な時期であれば手術によって完全治癒が期待できます。大腸がんの手術は近年大きく進歩を遂げており、低侵襲で整容性にも優れた腹腔鏡手術が急速に普及しています。
 大腸がんは発症する部位により術式・難易度が大きく異なりますが、当院では大腸がんの治療として腹腔鏡手術を早期から導入し、現在は大腸がんに対する標準手術として多くの症例に行っています。比較的難易度が高く予後不良とされる直腸がんに対してはロボット支援手術も積極的に導入しています。

肛門温存

直腸は、食物の通り道である消化管の最後の部位で、大腸のうちで一番肛門に近いところにあります。がんを治すための手術では、がん周囲の正常な部分を含めて広く切除しますので、直腸がんが肛門のすぐ近くにできてしまうと、直腸と肛門を一緒に切除して人工肛門を作らざるを得ない場合があるのは事実です。しかし最近では、肛門を温存した上でがんを切除することも可能なことが多くなっています。これは骨盤深部の操作が可能な腹腔鏡手術やロボット支援手術に加え、肛門の一部だけを切り取ってがんを切除しながら肛門を残す術式等、様々な技術的進歩により多くの場合で自然肛門を温存して永久人工肛門を回避することができるようになりました。
また進行した直腸がんでは、手術の前に抗がん剤と放射線治療を併用して行い(術前化学放射線治療)、がんを縮小させた後に手術を行っています。これによって手術での肛門温存を図るとともに、直腸がんに多い術後の局所再発をできるだけ減らすようにしています。しかし、肛門温存術式は肛門機能の低下による術後の排便障害(排便回数の増加や便漏れ)の問題もあり、直腸がんの手術では、それぞれの患者様の病状や年齢に合わせた最善の治療を提供することを心がけています。また、やむを得ず人工肛門(ストーマ)を造設した場合でも、当院では専門外来として「ストーマ外来」を設置し、ストーマをお持ちの患者さまへの長期的なサポートを行っています。

ストーマ外来紹介

抗がん剤、放射線療法

大腸がんの多くは手術で治癒しますが、進行した大腸がんでは手術後に再発や転移を認めることがあります。このような危険性が高いと考えられる場合には、再発を予防するため術後に抗がん剤を内服や点滴で治療します(術後補助化学療法)。また、手術ができないほど進行したがんや手術で取りきれなかったがんに対しては、がん細胞の成長を抑える目的で化学療法を行います。当院では、化学療法や放射線治療などの手術以外の治療についても、消化器内科や放射線科等、各科で連携しながら最新の知見に基づいた集学的治療として有効かつ安全に行えるよう取り組んでいます。

ロボット支援下手術

ロボット支援下手術では、「da Vinci(ダビンチ)」という最先端の手術支援ロボットを用いることで精度の高い手術を行うことが可能となります。 ロボット支援下手術は、これまで技術的に難しいと言われていた直腸がんに対する腹腔鏡手術の欠点を補い、精密な手術ができるとして期待されています。ロボット支援下手術は日本内視鏡外科学会で厳しい術者・施設基準が設定されており実施できる施設は限られていますが、当院はそのいずれの基準も満たしており安心して治療を受けていただくことができます。
 ロボット支援下手術は腹腔鏡手術と同様、体に小さな穴をあけてカメラや鉗子を挿入し手術を行います。腹腔鏡手術と異なる点は、ロボットの鉗子は人間の手以上によく曲がり(多関節機能)、手ぶれしない鉗子を使用するため、狭くて深い骨盤の中でも、正確で繊細な手術が行えるとして期待されています。また3Dのフルハイビジョン画像を約10倍に拡大したカメラ(腹腔鏡)を使用することで、手術部位の細かな解剖まで分かりやすくなりました。
 これらの特長により繊細かつ緻密な手術を行うとともに、直腸周囲の骨盤神経叢(性機能・排尿機能に携わる)をより確実に温存し、がんの根治性だけでなく排尿・性機能などの機能温存も期待できます。また、狭い骨盤深部での手術操作が可能となることにより、従来よりも肛門に近い下部の直腸がんでも肛門を温存できる可能性が高くなります。
 各術式は患者さん個人によって適したものが異なりますので担当医にご相談ください。

ロボット支援下手術
(ダビンチサージカルシステム)

虫垂炎

虫垂炎とは

急性虫垂炎は、虫垂という腸管の一部に炎症が生じて腫れてしまう病気です。典型的な症状として、右下腹部痛と発熱があります。食欲低下、嘔吐、下痢などの胃腸炎のような症状が強く見られる場合もあります。急性虫垂炎を術前に正しく診断できる確率は 8 割程度といわれており、実際に手術をしてみると虫垂炎以外の予期せぬ病気が 実際に手術をしてみると虫垂炎以外の予期せぬ病気が見つかる場合があります。

治療方針

従来、急性虫垂炎と診断された場合は直ちに手術を行うことが当然の治療と考えられてきましたが、このような緊急手術では、癒着のため切開創が大きくなったり拡大手術が必要になったりすることが多く、また創感染や腸閉塞などの術後合併症が発生するリスクも高くなります。 このため、当院では虫垂炎に対して一律に緊急手術を行うという選択をせず、全身状態の安定した症例ではまず保存的治療(抗菌薬投与)を十分に行って炎症を鎮静化させた後、 まず保存的治療(抗菌薬投与)を十分に行って炎症を鎮静化させた後、 まず保存的治療(抗菌薬投与)を十分に行って炎症を鎮静化させた後、3-4 ヵ月後に予定術として虫垂切除を行う(間欠的虫垂切除術)ことを基本方針としています。ただし症例によっては、緊急手術が必要であったり、抗菌剤でも治らず悪化する場合もあります。このような場合には、緊急手術を施行します。

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